マーケティングチームの立ち上げから現在まで:コニカミノルタのリアルなBtoBマーケ実践ストーリー1
更新:2022年07月25日(月)| 公開:2022年07月25日(月)| マーケティング
コニカミノルタジャパンのマーケティングサービス事業部のマーケティングチームは2022年の4月で5年目を迎えます。5年前、ほぼ何もない状態で3名でチームを立ち上げ、3年6ヶ月で創出した総パイプライン(売り上げ見込みの金額)の割合は25.6%UP。チームメンバーも16名になり、成熟期を迎えようとしています。
とはいえ、ここまでの道のりはそうたやすいものではなく、試行錯誤の連続。悩んで、実践して、失敗して、またトライして・・・の繰り返しでここまでやってきました。私たちのリアルな実践ストーリー第1回目は、マーケティングチームの立ち上げから現在までの軌跡をお届けします。
Section1:立ち上げ期(1年目)
人数 | 3名→5名 |
---|---|
メインのKGI | 商談数 |
課題 | ・施策の目標も実績も、振り返りもあいまい ・成果可視化の環境も運用もない |
アクション | ・過去施策の分析と目標の設定、集計方法の設計 ・Salesforce×Pardot×インサイドセールスの導入 |
すべて担当者任せ。“まさに昭和”な営業によるマーケティング
2017年までは「営業がすべてを担当するアナログな営業スタイル」。現場の営業がマーケティングからセールスまですべてを賄い、「勘・経験・気合・根性」で乗り切っていました。
当時の課題はこんなこと(皆様も思い当たることがあるのでは?)
- マーケティングは営業が片手間で
- 「去年こうだったから」と過去ベースの施策設計
- エクセルでせっせと案件管理
- 担当営業が休むともうわからない
ここで「営業プロセス改革×マーケティング推進」という全社プロジェクトがスタートし、これに連動するかたちで事業部マーケティングチームが結成されました。
「BtoBマーケティングが企画・実行できる組織を立ち上げよ。そして、成果を出せ」。こんな経営層からの指令を受けて誕生したマーケティングチームは、マーケター、営業リーダー、マーケター兼プリセールスのわずか3名でスタートしたのでした。
目標・実績・振り返り全てあいまいな“なんとなくマーケティング”
この時期のチームをひとことで表すなら、「なんとなくマーケティングっぽいことはしているけれど、効果測定があいまいでPDCAを回せていない」状態。
それは、なぜか?
理由は2つありました。1つは「目標とするKGI・KPIが定まっていない」こと。もう1つは「施策実施後の成果を計測できてない」こと。
たとえば、セミナーを開催しても「100人来てくれました」・・・で終わり。データがまったく活用されていなかったのです。
マーケチームの成果=事業貢献度を数字で示すこと
ここで、3人で決意を新たにしました。「チームが事業に貢献していることを目に見える数字で表そう」。
ここから、他社の事例や取り組みを参考にマーケティングをプランニング。いったんKGIを「商談数」にし、「まだ見えていない売上をつくるために必要なパイプラインのうち、〇〇%をマーケが作る!」と宣言。達成のための施策を考えて実行していきました。
成果を出すために必須の2つのポイント
マーケが数字で成果を上げるためにまず重要なのは、成果を可視化する仕組みを作ること。そこで、Salesforceに「マーケティング施策」「リード」「商談」「商品」「コスト」の5つデータを紐づけていきました。
次に、重要なのが指標の定義と計測方法の設計。「KGI、KPIをうまく設定できない」という声を聞きますが、原因はこの2つをやり切れていないからかもしれません。
たとえば、「有効商談数」であれば、どのフェーズに至った商談をいうのか(定義)、それをどのようにカウントするのか(計測方法、SalesCloudの抽出条件)をマーケティングチームと営業チームが一緒に決めて、共通認識にしておく必要があります。
KPI:
Key Performance Indicator/重要業績評価指標のこと。設定する最終的な目標に対して、現在どれくらい達成しているかを示す指標。有効商談数、商談数、ターゲットフォローリード数、リード数。KPIはKGIがいまどれくらい達成できているかを示す中間指標。
KGI:
Key Goal Indicator/重要目標達成指標のこと。ある特定の期間に達成すべき最終目標を数値化したもの。
問題発生!「営業がSalesCloudに入力してくれない・・・」
ここで、お気づきの方もいるかもしれませんが・・・
マーケティングチームが成果を出すにはシステムとルール作り、営業による入力の3つが必須です。しかし、よくあるのが、忙しくシステムに慣れない営業が商談や活動情報をSalesCloudに入力してくれないという事態。ご多分にもれず、私たちにもこの問題が発生しました。
そこで、実施したのが営業向けのワークショップです。その数、なんと半年で73回!
さらに、放置商談をなくすため、営業にパスした商談はマーケ・インサイドセールスが主体的にチェックし、営業からマーケへ、マーケから営業へというサイクルを構築しました。
5名体制になり、コミュニケーション方法を改善
マーケティングの基礎が作れたところで、マーケター、営業リーダー、マーケター兼プリセールスに、インサイドセールスの経験者とディレクターを加えてチームを5名体制にしました。
ここでの主な取り組みは、リードに対するコミュニケーションの改善です。営業が属人的に対応していると、営業が今すぐ客じゃないと判断した顧客は放置され、自然消滅。「そういえば、あの商談どうしたっけ?」となってしまいます。
この無駄をなくすために、顧客対応をすべて明確化。「営業が直接フォローする顧客」「フォローしない顧客」「インサイドセールスがフォローする顧客」「メールフォローする顧客」というルールを決めました。
1年目の成果:新規顧客からの商談機会獲得数が前年比2倍に
こんなことを手探りながら続けてみたところ、マーケティングチームの立ち上げから6カ月で新規顧客からの商談機会獲得数が95件に。前年比約2倍の成果を上げることができました。
Section2:成長期(2年目)
人数 | 5名 (マーケター/営業リーダー/マーケター兼プリセールス/ディレクター/インサイドセールス) |
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メインのKGI | 有効商談数 |
課題 | ・マーケティング施策の精度向上 ・リードの循環、マーケティングの定着・浸透 |
アクション | ・ダッシュボード化と数字に基づくプランニング ・顧客像に基づく施策の実行とそれを支えるターゲティング |
成果 | 創出した有効商談数139件(前年比約141%増) |
ようやくマーケティングらしいことができるように
2年目になってようやく必要なデータが蓄積し始め、本格的なマーケティングができるようになりました。
マーケティングには一定数のデータを集め、分析することが重要です。これからマーケティングに取り組む方は、ぜひ次の3つのデータを集積することを意識してください。
- マーケティング施策の実行日(年度)
- 商談発生のタイミング
- 受注予定日
これらのデータが集まると、
- 去年実施したウェビナーきっかけで、今年受注した商談
- 今年の展示会がきっかけで、来年受注予定の商談
- 去年実施したメール施策で、去年受注した商談
というようなことが一目瞭然になり、施策の成果を検証できるようになります。
こうしたデータを元にマーケティングプランを作成します。
マーケティングプランとは、マーケティングチームの目標と施策を社内に宣言する計画書で、大事なのは「誰が見てもわかるものを作る」こと。マーケティングチームが「こういうことをやります!」ということを周りの人に知ってもらうために作るものがマーケティングプランで、私たちも約100ページにわたって作り込みました。成果同様、数字で計画を示してプランに説得力を持たせることを重要視しています。
1年目は「商談数」をKGIに設定していましたが、2年目は「有効商談数」に。
目標をクリアするために解決しなくてはならない課題は次の2点でした。
- コンテンツのクオリティを上げること
- ターゲティングの精度を上げること
ペルソナを営業と作成!ポイントは、「個人ペルソナばかりに焦点を当てない」こと
コンテンツとターゲティングの精度とクオリティを上げるために、まず行ったのはペルソナの作成です。
マーケティングではペルソナの設定が大事だとよく言われます。ただし、その目的をきちんと理解している方は少ないかもしれません。
ペルソナとは、その商材・サービスで狙うべきお客様像のことで、ペルソナを作成する目的は2つ、「顧客像の可視化」と「認識の共有化」です。「このアイテムをどんな人に買ってもらいたいのか」というマーケティングの基本になるものですから、わかりやすく見える化し、全社共有しておかなくてはなりません。
顧客像の可視化で、私たちが意識しているポイントは、「個人ペルソナばかりに焦点を当てない」ことです。
BtoBマーケティングでは、「企業」や「組織」単位で抱える目的や方針が何かを想像することが重要です。企業や組織のレベルでまずペルソナを考えてから、そこに属する担当者のペルソナを考えていく。その上で、各施策で適切なペルソナを選びました。
ペルソナは1つでなくて良い。商材が複数あればペルソナも複数必要
ペルソナはさまざまな施策のベースとなる羅針盤のようなものですが、1つしか作成してはいけないというものではありません。最初から正しいペルソナを設定するのはとても難しいもの。私たちも、いくつか作成して、あれこれ試しアップデートしながら、よりよいペルソナを作り上げていきました。
また、扱う商材が複数ジャンルに分かれているため、ペルソナも複数設定する必要がありました。一度に全部の商材を購入してくれる顧客を想定するのは非現実的ですし、複数の商材に共通するペルソナを設定すると精度が落ちてしまいます。
「届けたい人に、届けたいコンテンツを、届く方法で」
ペルソナを作成したら、次はターゲティングです。ここで成果があったのは、第三者データの活用でした。
Sales CloudとPardotで顧客・取引データと行動データはすでに蓄積されていました。しかし、これだけでは成約確率が高い企業に絞ってアプローチすることができません。
たとえば、「セミナーにIR・CSRテーマのWebサイト制作に関心がある人を呼びたい」と思っても、そのような条件にマッチする企業を選別するには顧客・取引データと行動データだけでは不可能です。そこで、企業データベースを活用してターゲットリストを自動抽出するFORCASを導入しました。
FORCASで抽出されたターゲット企業は約2,100社。それらターゲット企業に対する施策で特に効果が表れたのは、セミナー告知チラシを入れた封書を送る施策でした。「いまどき紙を使った封書?」と思われるかもしれませんが、ターゲットとなるペルソナとコミュニケーションが取りやすい方法がオンラインとは限りません。「メルマガはあまり見ないが、自分宛の封書は必ずチェックする」というペルソナの行動の仮説を立て、実行しました。ターゲティングで定めた企業・担当者にとって、心地いいコミュニケーション方法を選べるように、仮説と実行を繰り返しています。
営業とのコミュニケーションはマーケから積極的に!
2年目に意識したのは、営業とのコミュニケーション強化です。たとえば、下記のようなことです。
- 営業状況の共有
- 施策の結果/KGI・KPIの進捗状況
- ホットリードの条件
- 商談結果のフィードバック
- お互いへのお願い事項の伝え合い
「お互いへのお願い事項」は重要です。営業の理解と協力なしにはマーケティングは成り立ちませんから、お互いに何をして欲しいのかをマメに伝えるようにしました。
営業サイドにマーケティングを理解してもらいたくて、マーケティング勉強会も始めました。結局のところ、マーケティングの肝は社内調整。「いつかわかってくれるかも」ではなく、マーケサイドから営業に積極的にアプローチしました。
2年目の成果:有効商談数が前年比約141%増に
ようやくマーケティングらしいことができるようになった2年目。この年に創出した有効商談数は139件で、前年比約141%増の成果となりました。商談数は前年比2倍ほど。商談数を倍増して、有効商談数を約1.5倍に伸ばすことができました。
Section3:成長期(3年目)
人数 | 6名→9名 |
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メインのKGI | パイプライン |
課題 | ・オフライン施策が実行できなくなった ・リード・施策増加によるメンバー不足 |
アクション | ・Webサイトリニューアルの実施 ・インサイドセールスの役割と顧客情報管理の見直し |
成果 | 問合せからの有効相談件数:前年比258%増、パイプライン創出金額:前年比348%増 |
チームを6名体制にしてデジタルマーケティングを強化
3年目に発生したのがコロナ禍。デジタルマーケティングの強化が必要になりましたが、成果が出ていたオフライン施策に頼りっきりで、かつWebサイトの管理をマーケティングチームではなく別組織がやっているという状況。
そこで、チームメンバーを増員。マーケター、営業リーダー、マーケター兼プリセールスに、インサイドセールス、ディレクターに加えて、新たにWebマーケターをプラスした6名体制にしました。
結果、問合せからの有効相談件数は前年比258%増、パイプライン創出金額は前年比348%増と、着実に成果を上げていました。
特定のメンバーへの仕事の偏りを是正すべく9名体制に
ここで問題が。インサイドセールスとMA担当者がとにかく忙しい!連日残業続きなのを見て、このままではいけないと増員しました。インサイドセールスを増やし、新たにMAツールのオペレーターを入れて9名体制に。3名からスタートして3年目には3倍の組織になったわけです。
3年目の成果:創出した総パイプラインの割合が25.6%に
立ち上げから3年半。ようやく数字で見える成果が出始めます。ROI(投資利益率)も175%と、数字でしっかり報告できるようになっていました。こんなふうに数字の成果が出始めると、経営層を含めた周りの見方が違ってきます。マーケティングチームの存在感がだんだん高まってきました。
3年目は具体的な課題解決に向けたコミュニケーションが求められる
3年目ともなると、メンバーも増え、課題も具体的になってきます。そこで、チーム間コミュニケーションの方法を変えました。全体定例会では消化しきれなくなってきたので、規模の小さいチームミーティングを実施することにしたのです。
ポイントは「テーマと対象を絞った具体的なコミュニケーション」を行うこと。全体の戦略はもちろんですが、役割間連携や商談機会創出、受注最大化といったようにより具体的なテーマを立てて、具体的な話し合いをすることが重要です。
たとえば、「商談機会創出」についてなら、マーケとインサイドセールスが施策の成果を共有し、課題を整理し、どんなアクションを取ればいいのか細かく打ち合わせします。こうすることで、日々目の前に起こる課題をスピーディに解決し、施策の成果を上げられるようになっていきました。
Section4:成熟期(に向けて)
人数 | 16名 |
---|---|
メインのKGI | LTV |
課題 | ・マーケティング施策とコンテンツ企画・制作力・実行力の強化 ・マーケティング戦略の策定のための分析強化アクション |
アクション | ・人員拡充 ・データ分析のための設計と実行 |
事業部マーケティング組織は16名の大所帯に
現在、マーケティングチームは16名。リーダーをトップに、インサイドセールス4名、ディレクター2名、Webマーケター2名、オペレーター2名、アナリスト2名に、マーケター・プランナー3名が所属する大きな組織になりました。スタート時の約5倍です。
このメンバーでいま取り組んでいるのは、①LTV(顧客生涯価値)の最大化と②マーケティング施策を正しく評価するためのデータ設計です。
①LTVの最大化
リードジェネレーション(リードの獲得)
↓
リードクオリファイ(リードの精査)
↓
リードナーチャリング(ターゲットリードをフォロー対象に引き上げ)
↓
トスアップ(セールスにパス)
こうした一連の流れを俯瞰しつつ、どこにボトルネックがあるのかを見極めます。
②データ設計
マーケティング施策・リード・商談・商品・コストの5つの指標でデータを蓄積しています。重要なのは、すべてのデータが紐づけられていることです。数字に基づくデータがあると、判断するときやメンバーで議論するときの材料となります。正確に、かつスピーディーにデータ連携・可視化できる仕組みを作るため、今も試行錯誤を繰り返しています。
成熟期に向けて目指していること
LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すのは、CAC(顧客獲得単価)の許容幅を増やすため。LTVが高いほどCACの許容幅が広がり、結果的にマーケティング施策でできることの幅も広がります。
「LTV」の最大化は、マーケティング組織内で完結する話ではありません。営業組織、デリバリー部門、カスタマーサクセス部門など他部門と連携しながら、お客さまとのコミュニケーションと提供するサービスの質向上に挑戦し続けています。
LTV:1受注企業が取引期間内に創出した利益
CAC:1受注企業を獲得するために費やしたマーケとセールスのコスト
まとめ
BtoBマーケティングチームの立ち上げ・運営を実践してみて、大切だと感じたことが3つあります。
1.営業との連携目標を設定すること
BtoBマーケティングは営業との連携が必須です。マーケティング側が勇気を持って事業にコミットし、どんな戦略で何をするのか宣言し、営業にも積極的に働きかけることで早く成果を出せます。
2.成果を可視化すること
マーケティングの事業貢献度を数字で示しましょう。数字で見える化することで、経営層も関係者もマーケティングチームがやっていることを理解・納得しやすくなります。
3.メンバーの役割を明確化すること
チームが軌道にのれば、必ず増員が必要になります。そのとき、ただ〇職を○人くださいというのではなく、「〇〇という目標を達成するために〇職が○人必要なのでアサインしてください」と依頼したほうが説得力があります。
本コラムでご紹介したような、BtoB事業におけるマーケティング組織立ち上げをご検討されている、苦戦している方は、ぜひお気軽にご相談ください。実践経験とお客さまへのマーケティング立ち上げご支援の実績をもとにサポートさせていただきます。
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はじめてBtoBマーケティングに触れる方へ マーケティング担当者が知っておくべきこと【前編】
BtoBマーケティングの基礎や、コンテンツやMA、デジタル広告などの各施策、マーケティングにおける目標設定、施策の効果計測方法などについて、解説します。。
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