バイオマス発電所における燃料貯蔵庫の温度を
リモートで常時把握し火災を予防
合同会社境港エネルギーパワー 様
事例概要
株式会社東京エネシス様が 100% 出資して建設したバイオマス発電所を運営する合同会社境港エネルギーパワー様は、出火事故を未然に防ぐための方法を模索していました。
この発電所は 24 時間操業しており、常時監視する必要があります。
そこで、コニカミノルタのサーマルカメラを用いた火災予防ソリューションを導入。
燃料貯蔵庫の温度を 24 時間可視化できるようになり、消防署からもその対策が評価されているといいます。
課題
- 燃料貯蔵庫の温度を常時監視できる仕組みが求められる
- ピンポイントでなく「面」で燃料貯蔵庫の温度を捉えたい
- 誰でも一目で温度変化が分かる表示が必要に
解決策
- MOBOTIX サーマルカメラ活用した火災予防ソリューションで常時監視を実現
- サーマルカメラにより「面」での温度監視が可能に
- 温度により色が変わるサーマル映像で温度変化を可視化
導入の背景
サーマルカメラを活用し燃料貯蔵庫の温度を常時監視
廃材や間伐材、木質ペレットなどを燃やして発電するバイオマス発電所は、再生可能エネルギーへの注目度の高さから、日本各地で誕生しています。
一方で爆発・火災事故も多いのが特性で、経済産業省によると2019 年から2024年3月までに14件の事故が起きている※といいます。
バイオマス発電所は比較的小規模で運営できるため住宅地の近くに設置されることも多く、一旦事故を起こしてしまうと再稼働まで困難な道のりが予想されます。
元々高額な保険金もさらに増額するため、火災は発電所にとって大きなビジネス上のリスクです。
実際に近隣のバイオマス発電所で火災が起きたこともあり、同発電所としても火災防止は重要なビジネス課題でした。
※出所:経済産業省「令和2年度 電気保安統計」

境港エネルギーパワー様は建設中から、地域の消防署と協議を行っていました。
その際に燃料のパーム椰子殻(PKS)、バーク(樹皮)材が貯蔵時に熱を持つことから、リスク管理のために表面温度の計測を求められました。
加えて当時、火災予防条例の「温度監視する」という文言が「発熱の状況を常に監視する」へ変更されることが予定されていました。
そのため今後に備え、表面温度を計測するだけでなく発熱の状況を常に監視できる仕組みを探し始めたといいます。
様々な製品を比較検討した結果、コニカミノルタのサーマルカメラによる「火災予防ソリューション」の導入を決められました。
同社の常務で境港バイオマス発電所長の高橋仁様は当時の判断を次のように振り返ります。
「コニカミノルタのサーマルカメラは以前、工事を実施したお客様の工場で見たことがあったのでなじみもあり、大体の機能も把握していました。事務所に設置したモニターのサーマル映像で表面温度の色が変化するので、誰が見ても温度が上がっていることがすぐに分かります。一定以上の温度になれば自動的にアラートを出すように設定できるので、異常を見逃すことはありません」

モニターの映像(動画:56秒)
コニカミノルタのサーマルカメラでは、無償のアプリケーションが利用できます。
それによりネットワーク経由でモニターに映しだしたサーマル映像では、温度帯によって細かく色が変わるため、赤や白といった高温帯が表示されると温度が上昇していることをすぐに把握可能です。
発電所では燃料貯蔵庫全体を計測しており、細かい場所の特定が不要なため利用していませんが、可視画像を同時に映し出せる機能もあり、これで状況把握をさらに容易にすることもできます。
境港バイオマス発電所は24時間稼働しているため、日中は高橋様を始めとする管理スタッフが見守っていますが、夜間はより少人数の夜勤スタッフが安全管理を行います。
多様なスタッフが温度監視を行うため、誰が見てもすぐに分かる視認性は重要でした。
導入の効果
温度変化を「面」で可視化し火災リスクを大幅に低減
設置にあたっては、実現したい内容をコニカミノルタの技術者に伝えました。
その内容を踏まえた技術者から、最適と思われる場所を提案。
そこにサーマルカメラを設置しました。
「実際に現場を見て一番良い場所を決めていただき、現場の状況に合うように調整の上、設置してもらいました」(高橋様)。
2023年末頃に導入し、約 1 年連続稼働していますが、大きな問題なく監視を続けています。
その効果を次のように語っています。
「火災を起こさないことは、リスクを高めないために最低限必要です。そのために温度の上昇を可視化できるようになったことは、大きなメリットです。温度計を挿して温度を測っている場所もありますが、それではその場所の温度しか分かりません。サーマルカメラは、『面』で温度を計測できるのがいいですね」


サーマルカメラ導入前は、燃料貯蔵庫に行って接触型の温度計を挿して計測していました。
そのため計測頻度は1日1回程度でしたが、サーマルカメラを利用することで常時監視が可能になりました。
消防署は工場や飲食店など消防法に基づいて消防用設備等が義務づけられている建物に対し、一定間隔で立ち入り検査を行います。
多くの場合は事前に連絡が入りますが、まれに抜き打ちで検査に来ることもあります。
発電所にはサーマルカメラを導入してから1 回、消防署が抜き打ち検査に訪れました。
そのときの経緯を高橋様は話します。
「消防立合いは建設中に終了していましたし、サーマルカメラは消防法に定められた消防用設備でもないため、消防署に対してその設置を報告していませんでした。立ち入り時に新たにサーマルカメラを導入したと説明したところ、じゃあ問題ないですね、とカメラの写真だけ撮ってすぐに帰られました」
サーマルカメラは消防用設備には指定されていませんが、消防署もその効果を認識されているようです。
「燃料の山」への登頂も不要に 24 時間操業を支えるソリューション
境港バイオマス発電所では、異常の発見は人が五感で捉えることが重要と考え、カメラや温度計による計測はあくまで補助的な手段とみなされています。
そのためサーマルカメラ導入後も、基本は以前と同様のフローで巡回を行っています。
ただし、以前は燃料を積んでいる約 5m の山に登って状況を確認していましたが、現在は山に登ることはなくなり、その分作業者の負担は減っています。
また、従来は現場に行かなければ温度が分かりませんでしたが、現在は事務所で確認可能になっており、少なからず効率化に役立っています。

一般的なバイオマス発電所は、問題が起きると操業を止めて修理を実施しますが、境港バイオマス発電所ではメンテナンス事業を行う親会社の東京エネシス様が持つ知見やノウハウにより、操業を止めずに修理をする方法を確立し、24時間操業を続けています。
高橋様は「設備が止められない工場等に、サーマルカメラによる火災予防ソリューションはオススメです。特に万一火災が起きると重大事故につながりやすく、古い設備が使われていることも多い石油化学プラントには有効です。発熱状況を常時監視することは、火災防止だけでなく熱効率を高めたり、効果的なメンテナンスにも活用できます」と語っています。
今後の展望
持続可能な未来に向けてさらなる取り組みを進める
境港バイオマス発電所ではリサイクルに取り組んでいます。
バイオマス発電は元々二酸化炭素を吸収して成長する植物を利用するためカーボンニュートラルとみなすことができますが、燃焼させるとどうしても灰が残ってしまいます。
そこで、灰を肥料やコンクリートの材料として活用する取り組みを進めています。
「現在100%のリサイクルを目指して取り組んでいます」(高橋様)。
一方、親会社である東京エネシス様でも2022年5月、グリーンエネルギー事業本部を新設し、再生エネルギー分野への取り組みを強化しています。
その取り組みを支えるため、境港バイオマス発電所で得たノウハウを活用しています。
境港バイオマス発電所は境港エネルギーパワー様と東京エネシス様とともに、持続可能な未来に向けて社会に新たな価値を提供していくことでしょう。
コニカミノルタ担当者の声
再エネ発電の安全性を担保し地域社会に貢献・実運用の知見を吸収し今後の展開に生かす
弊社からの電話をきっかけに始まった今回のプロジェクトは、発電所内でのデモ、仮設置を経て、わずか4カ月という短い期間でのご導入となりました。
突然のご案内だったのにも関わらず、弊社を信頼してくださり、現場の隅々までご案内いただくなど丁寧な対応をいただいたことに感謝をしております。
単なる技術導入にとどまらず、境港エネルギーパワー様の安全性向上と持続可能なエネルギー供給を支える重要な取り組みと理解しており、今後も、貴社を支える取り組みにお力添えできればと思います。
ICW 事業統括部 画像IoT ソリューション推進部
部長
新妻 雅人
普段はオフィスでコンテンツの作成・運用を行っておりますが、今回は現場の生の声を届けるべく現地へお伺いしました。
事前に平面的な資料に目を通していましたが、実際に目にする横幅20mの燃料貯蔵庫や5mに及ぶ燃料の山の高さに圧倒されました。
燃料貯蔵庫内のどこかで異常な発熱が発生しても、人間の目やピンポイントの温度測定ではすぐに気づくのは難しいということがよく分かりました。
事務所のモニターを見たいという要望もご快諾いただき、実運用をイメージしやすい内容となりました。
今後は広くお客様へお届けしてまいります。
ICW 事業統括部 画像IoT ソリューション推進部
マーケティング企画グループ
福永 夢真
コニカミノルタの火災予防ソリューション 満足ポイント
- 燃料貯蔵庫の温度を「面」で常時監視し、消防署の要望や条例に対応
- 誰でも状況が分かるサーマル画面から温度変化をリアルタイムで把握でき、火災リスクを抑制し業務効率化にも寄与
- 火災予防のノウハウに長けたコニカミノルタ社員の専門性により スムーズな導入を支援
お客様プロフィール

名称 | 合同会社境港エネルギーパワー |
---|---|
住所 | 鳥取県境港市昭和町二丁目9 |
設立 | 2017年(平成29年)4月 |
事業内容 | 木質バイオマス発電所の運営 |
URL | https://sakaibp.p-kit.com/ |
電力事業の建設・保守工事を中心に社会課題解決に取り組む総合エンジニアリング企業の株式会社東京エネシスが 100%出資して建設した、初の「自社で運営する発電所」。地元自治体の協力のもと、パーム椰子殻(PKS)、バーク(樹皮)材を使用したバイオマス発電事業を、安全最優先で進めている。燃料の原産地である東南アジアに比較的近い、西日本の良港境港に立地。再生可能エネルギーを通じて脱炭素社会の実現を目指す。
合同会社境港エネルギーパワー様の事例はPDF版でもダウンロードいただけます。
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