受注につながるセールスコンテンツの作り方・使い方:コニカミノルタのリアルなBtoBマーケ実践ストーリー9
更新:2022年11月21日(月)| 公開:2022年11月21日(月)| マーケティング
コニカミノルタジャパンのマーケティングサービス事業部のマーケティングチームは2022年の4月で5年目を迎えました。ほんの5年前、ほぼ何もない状態で3名でチームを立ち上げ、3年6ヶ月で創出した総パイプライン(売り上げ見込みの金額)の割合は25.6%UP。チームメンバーも16名になり、成熟期を迎えようとしています。
とはいえ、ここまでの道のりはそうたやすいものではなく、試行錯誤の連続。悩んで、実践して、失敗して、またトライして・・・の繰り返しでここまでやってきました。
私たちのリアルな実践ストーリー第9回目は、受注につながるセールスコンテンツの作り方・使い方についてです。
Section1:コンテンツって何?
1-1 コンテンツとは
意外と正しく理解されていないのが「コンテンツとは何か?」ということ。コンテンツ(contents)=内容、中身という意味ですから、文字通りに捉えれば、映像・音声・文章などによって表される情報のことを指します。
しかし、BtoBマーケティングにおいて、コンテンツは顧客の態度変容を促すためのもの。BtoBマーケティングのコンテンツは、映像・音声・文章などの単なる「情報」ではなく、「お客様の心を動かすもの」でなければなりません。
例えば、Aという商品が欲しくて検索している人がいるとします。検索で表示されたページにAのスペックがただ並んでいるのを見て、はたしてお客様は買いたいと思うでしょうか?もちろんスペックは重要な情報ですが、それよりもAを使うとどんなことができるのか、どんな思いでAが作られたのかといった情報に興味をひかれるのではないかと思います。これが、BtoBマーケティングにおけるコンテンツです。
ポイントは「相手にとって魅力的であるかどうか」。そのために私たちは、次の3つをコンテンツ制作の軸にしています。
この3つを軸にしても、絶対に忘れてはいけないことがあります。それは「お客様は、あくまで自分の課題を解決する情報を知りたがっている」ということ。お客様はサービスについて知りたいわけでは決してないのです。ここを間違えてしまうと、とてもつまらないコンテンツになってしまいます。
たとえばこんなウェビナーを行うとします。
こんなふうに進めていないでしょうか?
これでは、商談にはつながらないのは当然です。理由は、マーケティング施策を設計する上でとても大切な認識が欠けているからです。
1-2 マーケティング施策の設計で大切なこと
お客様のフェーズに応じたコミュニケーションが重要
マーケティング施策の設計で大切なのは「顧客が欲しいタイミング(フェーズ)で、双方が望む購買と商談のプロセスに至れるように設計すること」です。
例えば、まだ「興味・関心」のフェーズにいるお客様に見積もりや商談を持ちかけてもうまくいきません。見積もりや商談が成立しうるのは、すでに「比較・検討」の段階に入っているお客様です。
お客様が望むことと自社が提供したいことのタイミングをすり合わせて、最適なコミュニケーションを考える。これがマーケティング施策の設計ではとても重要です。
コンテンツにも同じことが言えます。興味・関心を持ってくれるお客様を集めたいなら、エンタメ色が強いトレンド的な話題でコンテンツを作り、対象母数を増やすほうがうまく行きます。「この製品は御社の課題を解決できます」というようなコンテンツではうまくいきません。
コンテンツ制作の前にやるべきこと
リードは多いのに受注が少ないと、「受注につながるコンテンツを作らなくては!」と焦ってしまいがち。ですが、上の図にある通り、個別具体的な課題解決につながるコンテンツは対象母数が少ないので、うまくいく確率は非常に低くなります。
受注につなげたいなら、まずやるべきはコンテンツ作りではありません。
まず、リード創出から受注までの全体を俯瞰してボトルネックになっているところはどこか、数字で特定します。そして、そのボトルネックに対して、マーケティング、インサイドセールス、セールスでそれぞれやるべきことはなにかを整理します。
次に、ペルソナ、カスタマージャーニーマップ、コンテンツマップを作ります。そして、商談にトスアップするために必要なコンテンツは何か、トスアップされたリードを受注につなげるために必要なコンテンツは何かを考えます。
なかなか成果が出ないと悩んでいる人は、コンテンツを考える前に、まずここから取り組むことをおすすめします。
1-3 数字で成果計測することの重要性
コンテンツを含め、マーケティング施策では成果を数字で計測することが重要です。数字で見える化することで情報共有しやすくなり、経営層の理解も得やすくなるからです。
マーケティング施策の成果を可視化するには、データベースを用いて「マーケティング施策」「リード」「商談」「商品」「コスト」の全データを1つに紐づけることが重要です。CRM / SFAを導入していない場合は、少し大変ですがエクセルでも可能です。
このような仕組みが構築できると、どの施策からどのリードを創出し、どのような商談を獲得して、どのような商品を受注したか、その売上を作るためにどのようなコストが発生したか、を紐づけることができるようになり、マーケティング施策の利益への貢献を分析することが可能になります。
データを持つことで、集計・分析したい軸で成果を抽出できるようになります。
Section2:セールスコンテンツ 〜作り方編〜
2-1 コンテンツを構成する5つの要素
コンテンツを構成する要素はいろいろありますが、当社では次の5要素でコンテンツを考えています。つい「手段」ばかりを検討しがちですが、大事なのは「対象」と「目的」、そして「ネタ」。特に重要なのは「対象(誰に)」「目的(何のために)」で、「ネタ」から考えると自社目線の面白くないコンテンツになりがちなので注意してください。
2-2 3つのペルソナと作り方
3つのペルソナ
顧客視点に立った施策やコンテンツの企画を行っていくためには「ペルソナ」が必須です。当社でペルソナを作成する際には3つの視点で検討を行い、BtoBのペルソナ作成においては、組織→個人の順に明らかにしていきます。
ペルソナの作り方
「顧客像の可視化」と「認識の共有化」をゴールにペルソナを作成します。作成にあたって最もハードルが低いのは、セールスにヒアリングすること。コストをかけずにペルソナを作成したいなら、まずはここから始めましょう。このときのポイントは、セールスには具体的なお客様事例を話してもらい、マーケター側で共通項を抜き出して1つのペルソナ像にまとめていくこと。そして、ペルソナは一度作成して終わりではなく、改善し続けることが大事です。
2-3 顧客の購買行動を可視化するカスタマージャーニーマップ
ペルソナが作成できたら、ペルソナがどのようなプロセスで購買を検討するのかをカスタマージャーニーマップに落としこんでいきます。カスタマージャーニーマップは、顧客の購買行動を共通認識し、施策の優先順位を決めるのに必要なものです。
BtoBの購買プロセスの特徴を押さえつつ、3つの要素を盛り込んで作成します。
BtoBの購買プロセスの特徴
- 購買の意志決定に複数人・複数部署が関わる
- 感情よりも論理性や合理性が優先される
- 長い時間とプロセスを必要とする
カスタマージャーニーマップに盛り込む3つの要素
- ペルソナにどんな感情を持ってもらうか
- そのためになにを伝えるのか
- どのような手法やタッチポイントで伝えるか
カスタマージャーニーマップの項目例
青字はできるだけ組織ペルソナに基づく個人ペルソナごとに分けます。赤字はコンテンツマップとしても活用できます。
2-4 キラーコンテンツと作成の計画
ペルソナやカスタマージャーニーマップを作る目的は、「キラーコンテンツ」を見定めることにあります。キラーコンテンツとは、ターゲット顧客にとって魅力的で、期待するコンバージョンに至る可能性が高いコンテンツのこと。マーケティングにかける予算やリソースは限られていますから、キラーコンテンツから優先して作成すべきです。
キラーコンテンツ例
- 比較表
- 導入フローや契約手続き
- 参考費用
- 見積もりシミュレーション
- 操作などのデモ動画
- 事例(予算や効果などが数字で記載されている)
- お客様インタビュー・導入実績
- 保守サービスなどの具体的な内容
実現難易度や優先順位を見ながら、顧客の購買ステージごとに必要なコンテンツの制作スケジュールを立てることをおすすめします。
2-5 コニカミノルタジャパンの実例
当社では、Webマーケティングチームが主導して企画から制作まで行っています。ただ、すべてのコンテンツ制作業務を内製で対応しようとはせず、資料の整形やデザイン、血の通ったコンテンツライティングなどは外部パートナーの力も借りながら、クオリティ重視で作成しています。
参考までに、こんな感じで制作しています。
Section3:セールスコンテンツ 〜活用編〜
3-1 コンテンツの活用には強い営業組織作りが必要
コンテンツの活用を考える際に、大事な視点があります。それは、マーケティング活動・施策のほとんどは「受動的な施策」であり、ISRや営業の「不快感のない能動的な施策」がないと、お客様に情報を届けるのが難しいということ。つまり、マーケター・インサイドセールス・営業がタッグを組んだ強い営業組織なくしてコンテンツの活用はありえません。
3-2 コニカミノルタジャパンの実例
私たちは、強い営業組織を作るために必要なことを言語化しています。「再現性」を、営業組織で言い換えると「属人化しないこと」。個人のオリジナリティを確保しつつ、誰もが一定レベルの営業活動ができるようにしています。
そして、「商談機会創出」や「受注最大化」といったテーマに合わせて、マーケター・インサイドセールス・セールスがコミュニケーションを密に取り合いながら、コンテンツをしっかり活用する方法を考えています。
受注につながるコンテンツを作り、活用するには、後工程を意識した全体最適の意識を持ち、かつ、全員がそれを理解することが最も大事なのです。
実際に当社で取り組んでいることとしては、
- マーケターが営業会議に参加し、情報の共有や営業活動の課題をキャッチアップ
- 営業やISRからの要望を受けて、新たなコンテンツを企画
- 制作したコンテンツは、営業・ISR含む社内関係者に共有し、それぞれの活動に役立ててもらう
- コンテンツも作成したら終わりではなく、お客様の反響や営業・ISRなどからのフィードバックを受けて、ブラッシュアップをする
などがあります。
まとめ
受注につながるセールスコンテンツを作るには、2つのポイントがあります。
1.「コンテンツの考え方を知る」
コンテンツとはなにか?に向き合い、相手が知りたい情報を届けることが大事です。マーケターだけでなく、ISRや営業の「コンテンツ」に対する理解と必要な投資も欠かせません。ペルソナやカスタマージャーニーマップの作成からまずは始めてみてください。
2.「ボトルネックの特定と解消」
受注をゴールとして全体を俯瞰した時に、マーケティング組織で実行すべきことはなにか?に向き合うことが大切です。全体最適の観点でボトルネックを特定し、マーケティングに携わるメンバー間のコミュニケーションを大事にしながら、解決アクションを実行してください。
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